マーク・フォン・ステューレ氏(Marc von Stürler)とSONOSAX

マーク氏はスイスのサウンドエンジニア

幼少のころから音に興味のあったマーク氏は、8歳の頃にテレフンケン(Telefunken)のテープレコーダーで録音の楽しさを知りました。そして数年後にフランスカルチャー(France Culture)が放送するラジオショー≪マグネティックナイト≫を聞く様になり音の世界とサウンド編集の可能性を予感する様になりました。

早速アマチュアの劇座向けのサウンド編集を手掛けるようになり、その後はジュネーブのラジオ局とテレビ局の業務補助も行うようになりました。

決定的な出来事となったのが80年代の、師ルーク・ヤーサン(Luc Yersin) との出会いです。ルークはまず彼を撮影現場に連れて行き、映画のポストプロダクションと映画の音編集現場を見せてくれたのです。ルークはDAVI (ローザンヌ州立美術学校のAV学部)と交流するよう後押しもしてくれました。当時はスイスフランス語圏では唯一の映画技術を学べる学校でした。

DAVIで優秀な成績を収めた後、ベルリンに移りドキュメンタリーのサウンドを手掛け始めました。撮影ではレンタル機で録音を始めましたが、やがてアンビエンスと”ワイルドな”音の録音が楽しめるステラボックス(Stellavox)と自身のマイクを使い始めました。短編映画とテレビ映画共にフィクションを録音することが増えました。着実にステップアップをして、主に長編映画と短編映画、TVシリーズと関わって行きました。

スイスに戻る

そして2000年初期にスイスを拠点に帰国した折にSONOSAXレコーダー SX-R4と遭遇し、すっかり気に入ってしまいました。

極めて小型で軽量なこのレコーダーは大きな強みになると見て、直ちに1台購入しました。そしてSX-R4の完璧な相棒であるSX-M32と組み合わせたセットアップ方法はマーク氏の軽くてコンパクトな録音セットになりました。≪小型でも強力なセットアップですよ!≫とのこと。

慣例にないこのセットアップ方法にプロダクションチームが驚くことが多々ありましたが、常にマーク氏の録音した優れた音質に満足してくれました。


SX-R4+への推移

SONOSAXのスタッフチームは、SX-R4+の開発の際にマーク氏とその他のスイスのサウンドエンジニアのフィードバックを頼りにこの新しいレコーダーを改良してきました。その中の外せない点として、人間工学の観点から使い勝手が良いことと(当時はまだ、タッチスクリーンが使い物になると思っていなかったそう。)、メタデータが簡単に操作できることがマーク氏によって挙がりました。相当な時間をマーク氏は惜しみなくSONOSAXエンジニアチームと費やしてくれました。その然るべき成り行きでSX-R4+ ベータの試験者の一人となってくれたのでした。現場での氏の貴重なフィードバックがファームウェアの改良だけでなく、ユーザーの期待に沿った進化を可能にしてくれるのです。

8つの専用フェーダーと4つのAES入力スプリッタそして4つのHFワイヤレスデバイスの稼働を可能にした拡張機能付のSX-RC8+とSX-R4+を獲得したことでマーク氏のセットアップも急激に進化しました。

コンパクトなセットアップ

マーク氏のセットアップ基本形はSX-R4+をSX-RC8+と繋げます。そしてK-tek社のスティングレイバッグ(Stingray)に収納します。

MSブームと、コンパクトさが便利なレクトロソニックスのレシーバ UCR420 と2本のデュアルレシーバ – レクトロソニックスのSRbとSRc(AESとリンクしている)そしてSSMトランスミッターをワイヤレスブームに取り付けて音を録り、レコーダーに転送します。2台のゼンハイザーG3 (Sennheiser G3)のトランスミッターから出力シグナルをカメラと監督チームに送ります。これら全ての電源供給はRRC 2054-2(99Wh)バッテリーを通じてレコーダーで行っており、このお陰で一日中作業が出来るのです。

機器全体の重量は≪わずか≫計6kgです。

 

SX-RC8+でミックスダウンをより正確に行えるので、マーク氏のような人には大変に役立ちます。3つの機能を備えた≪オールインワン≫です。

    • 8つのAES入力が可能である
    • 8つのフェーダーを任意のAES入力に自由に割り当てられる。
    • 4つのDC出力をヒロセ4pに分配可能。分散を回避します。

今となってはこれらの機能なくして撮影を行うことは考えられないと言います。

 

選りすぐりの選択

“SX-R4+の使いやすさは、優れたタッチスクリーンのおかげで、撮影現場で大変な威力を発揮します。空間の節約、セットアップの簡素化を可能にし、レコーダーの完全な補佐となります。SX-RC8+は、いわばマジックボックスです。4つのAES入力スプリッタと統合された電源ディストリビューションが本当に強みとなります。”

“機器の性能は信頼に値します、複雑な状況の現場で常に迅速な対応を可能にしてくれます。”

“8つのロータリー・ポットは手応え良く、SX-R4+ならではの広大なダイナミックレンジにより録音レベルに気を取られず収録に集中出来ます。”

“VUメータのバリスティックレンジの調整が可能であり、これがとても役立ちます。テープへの過負荷を避けるためにレッドゾーンのスレッショルドを-12dBに下げました。” とマーク氏。

“ユーザーインターフェースのカスタマイズが複数可能で、いたって簡単かつ直観的に使えます。ものの数秒で設定が変更されます。”

“私がサウンド録音を担当する映画の中で,サウンドの編集と映画のミキシングを行うエティエン・キュルショ(Etienne Curchod)という仲間がいますが,”これ程までの音質の機材と仕事が出来て嬉しい”と毎回彼は言ってくれます。”


今後に期待すること

今後はサーフェスコントロール付きへと進化してくれると嬉しいとのこと。つまりRC8+がこれに該当しますが、但しリニアフェーダーが付くこと。現場で安定した操作が可能な構成であり長編映画のセット等で使用できること。一方で軽量かつ超フットワークの軽さを維持できること、かさばらないことを希望するとのことです。

映画 “ラ・バレー(La Vallée) ” ジョン・ステファン・ブロン作(J.-S. Bron) 2017年、
サウンドテイク、プジョー206の車内にて